今年度は、素粒子の標準模型を与えるSU(3)_C×SU(2)_L×U(1)_Yカイラルゲージ理論のGinsparg-Wilson関係式にもとづく非摂動的な構成と(数値的)解析に関する研究を押し進めた。 第一に、SU(2)_L×U(1)_Y電弱ゲージ理論におけるゲージアノマリーの相殺に関する研究を行い、格子上の電弱ゲージ理論においても、ハイパーチャージについての条件Σ_rY_r=0およびΣ_rY^3_r=0が満されていれば、ゲージアノマリーが厳密に相殺することを示した。この研究ではLuscherの与えた6次元のトポロジカルな場のコホモロジーによる分類を行った。この6次元のトポロジカルな場は、一般に、SU(2)_L×U(1)_Yすべてのゲージ場に関してトポロジカルな性質をもつ。これをU(1)_Yについてのトポロジカルな場とみなし、コホモロジーの議論をもちいることで、U(1)_Yゲージ場の依存性を限定できた。これより、上記のハイパーチャージについての条件とSU(2)_Lの擬実性をもちいることにより、SU(2)_L×U(1)_Yの混合ゲージアノマリーの厳密な相殺の証明が可能になった。 SU(2)_L×U(1)_Yゲージアノマリーの厳密な相殺が示されたことにより、ゲージ対称性を保った形で、SU(2)_L×U(1)_Y電弱ゲージ理論の格子理論を構成できる可能性があることが明らかになった。次の課題として、現在、SU(2)_L×U(1)_Y電弱理論の具体的な構成法の研究に取り組んでいる。
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