研究概要 |
本研究は、Ginsparg-Wilson関係式にもとづく格子カイラルゲージ理論の構成と解析を主目的とする。平成12年度から14年度にかけて以下の研究を押し進めた。 1.SU(2)_L×U(1)_Y電弱ゲージ理論におけるゲージアノマリーの厳密な相殺の証明 SU(2)_L×U(1)_Yの場合に、Luscher(1999)の与えた6次元のトポロジカルな場をのコホモロジーによる分類を行った。この結果、格子上の電弱ゲージ理論においても、ハイパーチャージについての条件Σ_rY_r=0およびΣ_rY^3_r=0が満されていれば、ゲージアノマリーが厳密に相殺することを証明した。次の段階として、Weylフェルミオンの汎関数測度が大局的に矛盾なく、かつゲージ不変に構成できることの証明が必要になる。これまでに部分的な証明を与えることができたが、まだ、完成にいたっていない。 2.domain wall fermionを用いたカイラルゲージ理論のゲージ不変な構成 4次元カイラルゲージ理論のゲージアノマリーを6次元理論のカイラルアノマリーと関係づけて理解するというLuscherのアプロチと5次元的なDomain wall fermionとの間には密接な関係がある。そこで、Domain-wall fermionから得られる5次元Chern-Simons termの幾何学的な意味を考察した。その結果、Domain-wall fermionの枠組みにおいて、6次元(5次元格子+1次元連続時空)のトポロジカルな場が構成できることを示した。これを用いることによって、厳密な(有限格子間隔での)ゲージアノマリーの相殺を実現し、ゲージ不変なカイラルゲージ理論を構成する方法を明らかにした。 この結果は平成13年度8月にベルリンでおこなわれた第19回格子ゲージ理論国際会議(Lattice 2001)でPlenary Talkとして発表。(Lattice 2001,August19-24,Berlin) 3.U(1)格子カイラルゲージ理論の(数値計算にも適する)具体的な構成法の提案 現在までのところ、Ginsparg-Wilson関係式にもとづくカイラルゲージ理論のゲージ不変な構成法は、可換(U(1))ゲージ群についてのみ知られている(Luscher 1999)。この構成に対して、U(1)ゲージ群のZ_N-離散部分群に注目することにより数値計算にも用いることができる具体的な構成法を開発した。(この結果については、現在、論文を準備中) 4.Ginsparg-Wilson関係式の超対称模型、行列模型への応用 その他、格子上の超対称性模型や、行列模型にGinsparg-Wilson関係式を応用する研究を行った。
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