本研究課題は、超弦理論の非摂動論的性質の理解およびその基本的定式化を目指して、超対称Yang-Mills理論を古典論的および量子論的に様々な側面から解析することを目的とするものである。Braneダイナミクスの観点からの非可換幾何的超対称Yang-Mills理論におけるソリトン古典解の解析に関連してある程度の成果が得られたが、その他に関しては多くを残している。しかし、当初の課題とは別に、弦理論、特にタキオン凝縮という現象に対する、『弦の場の理論』という定式化を用いた解析において目覚ましい成果が得られた。平成12、13、14年度の三年間における研究成果を以下に記す。 1)非可換空間上の超対称Yang-Mills理論におけるモノポール解の非可換パラメータに関する高次解析:非可換空間上の超対称Yang-Mills理論におけるモノポール古典解、および、これを可換な記述に写像するSeiberg-Witten mapを、それぞれ非可換性パラメータの2次まで構成し、この解に対するbrane解釈を与えた。 2)弦の場の理論によるタキオン凝縮の解析:開弦の場の理論におけるタキオン凝縮の実現した真空(タキオン真空)を表す古典解が、運動方程式の解である他に、BRST不変性という重要な要求も満たしていることを示した。また、この解まわりの揺らぎモードの解析を行い、"タキオン真空においては物理的な開弦自由度が存在しない"という期待を強く示唆する結果を得た。 3)Vacuum String Field Theoryの研究: タキオン真空を起点としたと期待される弦の場の理論であるところのVacuum String Field Theory (VSFT)が本当に通常の開弦理論と関係しているか、という問題に関して、摂動論的真空を表すVSFTの古典解の構成、この古典解まわりの揺らぎのスペクトラムを解析、等の先駆的研究を行い、肯定的な結果を得た。
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