研究概要 |
本研究計画は、摂動論的量子色力学を基礎に、演算子積展開(OPE)やくりこみ群の方法、また同時にDGLAP型の発展方程式で記述されるQCDパートン描像を用いて、高エネルギーでのスピン物理の新たな展開を目指すものである。特に、核子および光子のスピン構造に焦点を当てて、これらの構造を明らかにするのを目標とする。当該研究計画の第2年度である平成13年度は、偏極電子・陽電子散乱での光子のスピン依存構造関数の高次ツイスト、具体的にはツイスト3の効果を中心に研究を遂行した。特に仮想光子の場合に登場するg_2構造関数にツイスト3の効果が現れることを、まずQEDのBoxダイアグラムで示し、次に純粋にQEDの相互作用での演算子展開の分析でこれを明らかにした。これをもとに、QCDの効果を取り入れた場合のg_2構造関数の3次のモーメントをleading-logで厳密に求めた。またcolorの数が大きい極限でのflavor-nonsinglet成分のx依存性を示した。また一方、実(real)光子に対する4つの構造関数の正定値性から、それらが満たす不等式を導き、論文として発表した(Phys.Lett.Bに掲載)。またこれより先には、仮想光子中のクォークおよびグルーオンのスピン依存パートン分布をQCDのnext-to-leadingオーダーで求め、その処方依存性を調べた。口頭では、7月にチェコで開催されたプラハ・スピン2001の会議において発表した(チェコの学術雑誌に掲載予定)。また,さらに10月に北京大学で開かれたspin2001で講演し(Int.J.Mod.Phys.掲載予定)、国内では9月に沖縄で開催の物理学会で報告した。計画の実施においては、国内各地とりわけ、東大・広大・横浜国大などの関連する分野の研究者との討論・研究交流が有益・不可欠であった。予算執行としては、国内の研究者との研究連絡や国際学会での発表のための旅費のほか、数式処理のためのソフトウェアを購入した。
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