本研究の目的は、次世代の衝突型加速器を想定したモンテカルロシミュレーションを行い、ストレンジB中間子の稀崩壊の測定に最適な測定器のデザインを解明することにあるが、研究初年度である平成12年度は、当初の予定通りモンテカルロシミュレーションの準備をパーソナルコンピュータ上で進めた。電子陽電子衝突について、半径1cmのビームパイプおよび5層の半導体検出器を配置するような構成をGEANTを用いて実現した。これは、現在準備が進められているBファクトリーのシリコンストリップ検出器の改良に関して実現可能と期待されている測定器の構成と一致する。これについて、もっとも基本的なパラメータである衝突係数の分解能を見積もったところ、現在稼動しているBファクトリー実験のシリコンストリップ検出器と比べて、分解能をほぼ半分に減らせることがわかった。これは、非対称エネルギーをもつ電子陽電子衝突型加速器において、B生成の背景事象となる軽いクオーク対生成を除去する際に非常に有効である。何故なら、クオーク対は同じ崩壊点から発生するのに比べ、B中間子対は平均200-300ミクロン程離れているからである。更に分解能を向上させるためには、ビームパイプの厚みを減らすことも、半導体検出器の改良と同様に重要であることもわかった。なお、人工単結晶ダイヤモンドピクセル検出器の読み出し電極に関する追試験については、全体の予算およびこの技術の進展を考慮して平成13年度に行うこととした。
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