今年度は、Large Extra Dimensionに関連する二つの課題について研究を行った。その内容は以下の通りである。 1.ニュートリノ質量、ニュートリノ振動とExtra Dimensionに関する研究 素粒子の標準模型は多大な成功を収めその地位を確立しているが、最近日本のスーパー神岡実験等から示唆されているニュートリノ振動はこれを超える物理の殆ど唯一の兆候として大変注目を集めている。 現在いくつかの種類の異なるニュートリノ振動の存在が報告されているが、本年度の研究ではこうしたいくつかのニュートリノ振動を同時に自然に説明可能な理論的シナリオとしてPseudo-Diracシナリオを包括的に調べ論文として発表した(Physical Reviewに掲載予定)。特に、神岡実験グループの大気ニュートリノ実験のデータ等により強く示唆されている大きな混合角がこのシナリオでは自然に導かれる、という興味深い知見が得られた。 さらにこうしたPseudo-Diracシナリオを実現すための理論的枠組みについても議論し、ある種のExtra Dimensionを持った理論ではPseudo-Diracシナリオで必要とされる小さなレプトン数の破れが自然な帰結となり得る事を議論した。 2.Randall-Sundrum模型の研究 最近階層性問題をExtra Dimensionを持った高次元理論の枠内で解決する試みとして注目されている、Randall-Sundrumの模型について研究した。階層性を説明するのに重要ないわゆるワープ因子が座標変換で消えてしまう事を確かめ、その物理的意味を現在解析中である。
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