本研究で得られた研究成果の内の主なものをいくつか挙げると以下のとおりである。 1.Gauge-Higgs Unificationに基づく現実的模型構築の試み 研究代表者は、1998年に幡中、稲見両氏との共著論文で、extra dimensionを持った高次元ゲージ理論の元でゲージ場とHiggsを統一する"Gauge-Higgs unification"を用いて階層性問題を解決するというシナリオを提唱した。本研究では、このシナリオを具現化する(標準模型を越える)現実的模型構築の試みを行った。具体的には、標準模型を越えるミニマムな理論としてSU(3)模型を提唱した(Mod.Phys.Lett.A 17(2002)2249-2264)。Gauge-Higgs unificationシナリオではゲージ群が標準模型の場合のSU(2)xU(1)から拡張され必然的に「新しい物理」の理論が導かれるという意味でも興味深い。また、研究を更に進め、残された重要な問題点を議論した。即ち、細谷メカニズムによるゲージ対称性の破れにおいて群のランクが下がらない、といった問題は、随伴表現に属する物質場の導入によって解決可能なこと、基本表現には、4次元のSU(3)模型の場合と違ってクォークが入ること、といった事を示す事が出来た。また、Weinberg角の予言値を導き、これを用いてSU(3)対称性の回復するエネルギースケールを求め、その際に直面するオービフォールド化特有の基本的問題点についても考察した。 2.2次元球面上の場の理論と回転対称性等の自発的破れ 研究分担者は、2次元球面を余剰次元として持ち、その中心にモノポール場を背景場として持つ場の理論を考察した。この様なモデルでは、球面の半径をパラメータとする臨界半径が現れ、その臨界半径を境にして球面の持つ回転対称性などが自発的に破れることが示された(Phys.Rev.D65(2002)065004)。
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