今年度は、フェルミ場の4体相互作用に対して導入する、補助場の効果について研究を進めた。まず、場の量子論の場合、南部-Jona-Lasinio模型に補助場として導入される、パイ・シグマ場の自由エネルギーに対する高次効果を計算した。結果は、対称性の破れを強める方向に働き、最近一部で主張されていた、補助場の高次効果が対称性の破れを回復するという護論-これが真実であれば従来の補助場による解析は意味をなさない-を退けた。(口頭発表は、日本物理学会・第57回年次大会・立命館大学びわこ、くさつキャンパス(滋賀): 2002.3.24-27、で行った。論文としても投稿したが、心ない一部のレフェリーのため、未だ掲載ができていない。鋭利奮闘中である。)さらに、より明確に補助場の効果を調べるため、自明な模型での考察に入った。具体的には、グラスマン積分(=0次元の理論)における、4次の項を補助場で消した場合の結果の吟味である。その過程で、これが、作用の2階微分が1階微分とともにゼロになる、いわゆる火線 (Caustics) と呼ばれる最も簡単な場合になっていることがわかり、非常に面白い模型であるという副産物を得ることもできた。解析は、火線領域ではエアリ関数を核にした、またそれ以外の領域では通常のガウス積分を核にした鞍部点法による計算を、つなぐことで行うことができる。結果は、予想通り、高次効果を採り入れることで、より正確な値に一致させることができることが示された。現在、論文として投稿中である。さらに、分析を進め、量子力学の4体相互作用の場合(これも、解ける模型である)について計算を進行中である。いっぽう、南部-Jona-Lasinio模型と結合したゲージ場の高次効果を精密に計算した論文を中心とした研究指導で、大学院生に博士の学位を与えることができた。
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