初年度と2年目にかけては、背景場として、非可換ゲージ場があり、それと結合している、南部-Jona-Lasinio模型を、補助場の方法でフェルミ粒子の積分を行った後、ゲージ場の量子効果を含めて解析した。これは、2ループ効果を計算することになり、多大の労力と計算時間を経た後、結果は、(1)ゲージ場の量子効果は、カイラル対称性を破る方向に常に働き、QCDで我々の期待するところと全く矛盾はない。(2)その磁気的背景場依存性は、フェルミオンの場合(背景場の下では無限小の力で、カイラル対称性が破れる)に比べて非常に複雑であった。すなわち、4次元では、磁気的背景場の大きさと共に、カイラル対称性の破れの指標、すなわち、力学的(フェルミ粒子の)質量、が単調に大きくなっていくことが判った。これに対して、3次元では、カイラル対称性の破れの小さい領域では、質量は背景場の単調な増加関数として振る舞うが、大きな破れの領域では、逆に、単調減少関数となることが判った。2年目から最終年度は、こうした南部Jona-Lasinioでの補助場の有効性をより基本に立ち返り、調べる研究へと進んだ。まず、補助場の自由エネルギーに対する高次効果を計算した。結果は、対称性の破れを強める方向に働き、最近一部で主張されていた、補助場の高次効果が対称性の破れを回復するという議論-これが真実であれば従来の補助場による解析は意味をなさない-を退けた。さらに、より明確に補助場の効果を調べるため、自明な模型での考察に入った。具体的には、グラスマン積分(=0次元の理論)における、4次の項を補助場で消した場合の結果の吟味である。その過程で、これが、作用の2階微分が1階微分とともにゼロになる、いわゆる火線(Caustics)と呼ばれる場合の最も簡単な例になっているという副産物が得られた。結果は、予想通り、高次効果を採り入れることで、より正確な値に一致させることができることが示された。現在、論文として投稿中である。さらに、分析を進め、量子力学の4体相互作用の場合(これも、解ける模型である)について計算を進行中である。一方、昨今の場の量子論の教科書の大部化に対して、一年で読み上げることを目標として、『演習場の量子論』初年度から2年目の間に書き上げた。
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