本研究は、四重極変形の自由度と回転軸の傾きを含んだ回転の自由度を集団変数とし、集団座標の方法を用いて量子力学的な状態を解くことにより、原子核の高速回転状態に見られる特徴的な集団運動状態を分析し、その微視的理解を進めるものである。 2年間の本研究では目指した目標を達成できたものとできなかったものがある。特に、集団座標の方法の基礎方程式を解き高精度に波動関数を求める最終的な方法について、特に回転の効果を自己無撞着に取り扱う場合については引続き検討を要する。 ここでは得られた主な結果を述べる。1)平均場近似を越えたRPA相関エネルギーの効率良い計算法を開発し、より現実的なポテンシャルエネルギー面の計算が可能になった。2)有効相互作用として四重極対相関を取り入れることが特に回転の自由度を扱う場合に重要であることを明らかにし、かつ、この相互作用を取り入れた透熱準粒子基底の構成法を開発し、それが回転運動のポテンシャル面の計算にとって大変有用であることを示した。3)変形の自由度に対する集団座標の動的トンネル効果を用いて、高スピンアイソマーの崩壊や超変形回転バンドの崩壊現象などを統一的に取り扱う理論的枠組を整備し、それらが多くの現実的な場合応用可能であることを確かめた。4)回転軸の傾きの自由度については、斜向クランキングによる平均場近似の範囲内での取り扱いが第ゼロ近似としては有効であることをチェックし、その一つの例として奇核1準粒子強結合回転バンドの性質をよく記述することが可能であることを示した。5)回転軸が変形主軸から大きくずれない場合にRPAによる動的取り扱いにより、最近実験で観測された非軸対称超変形状態上に励起した首振り運動(wobbling motion)を微視的立場から分析できることを示した。
|