恒星の進化を研究する上で重要な天体核反応の低エネルギー領域での反応率を精度良く決定するために、高性能の反跳核分離装置が九州大学タンデム加速器実験施設に建設された。この反跳核分離装置は加速器からの重イオンビームによる核反応で生成した核を、元の一次ビームとのエネルギーおよび運動量の差を利用して電場・磁場の組み合わせによりS/N良く分離する装置である。この反跳核分離装置をうまく利用することで反応生成核を二次ビームとして取り出すことが可能となる。 本研究では、九州大学タンデム加速器実験施設における不安定核二次ビームの核分光実験の実現を目指して、二次ビーム生成のための開発を行った。タンデム加速器からの重イオン一次ビームと軽い標的核の組み合わせによる、逆運動学的核融合反応により不安定核を生成し、反跳核分離装置を利用して一次ビームから分離、分離装置の最終焦点面に純度良く導くことで二次ビームを実現する。逆運動学を利用するのは、二次反応に充分な二次ビームエネルギーを得、かつ反跳を前方に収束させて二次ビームの輸送効率の向上を図るためである。当初目標としていたフッ素18二次ビームを生成するのは困難と判断されたため、より条件の良いナトリウム22についての開発を進める事とし、後者については毎秒10の4乗個の純度の良い二次ビームを得ることが可能となった。また実験やビーム調整に必要な荷電粒子測定系の開発を行い、放射線損傷・高計数率に耐え、TOF測定に適した高速の時間応答を備えた二次元位置感応型荷電粒子検出器および、専用の回路を製作した。今後更に開発を進め、不安定核二次ビームのクーロン励起による核分光実験の実現を目指す。
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