研究概要 |
12年度の研究は次の2つの課題を中心に行なった。 1)アイソスピンとスピンの自由度を持つRPA線形応答関数の開発とスキン核の励起構造の研究。 崩壊線近傍の原子核では実験的に検証されている厚いスキンにより、一体場の構造が安定線上の原子核と大きく違ってくることが予想される。特にスピン・軌道力は大きく変化するものと思われる。このような一体場の特徴が、崩壊線近傍の原子核のしきい値付近を含む低いエネルギーのFermi型およびGamow-Teller型励起状態への大きな影響を持つことが考えられる。この新しい励起構造を探るには,陽子・中性子の自由度をexplicitに取り入れかつ連続状態を取り入れた座標空間での線形応答関数を解く必要がある。線形応答関数プログラムのスピンの自由度がない場合は我々が世界をリードし最初に開発した。スピンの自由度が入った場合のプログラムを12年度に完成した。このプログラムにより、かさ原子核やスキン原子核のしきい値付近を含む低いエネルギーのFermi型およびGamow-Teller型励起関数の構造を明らかにする計算を行った。 2)崩壊線近傍の原子核にたいするSkyrme型有効相互作用の開発。 連続状態を取り入れた線形応答関数は、座標空間で解かれるため、Skyrme型有効相互作用がきわめて有用であることがわかっている。一方、Skyrme型有効相互作用は、スピン・軌道力のアイソスピン依存性が強いために、崩壊線近傍の原子核に対して飽和性を十分に評価していないという指摘もある。我々は、Skyrme型有効相互作用のスピン・軌道力のアイソスピン依存性を再評価し、不安定原子核に対してもより定量性のあるパラーメーターの決定を行った。
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