次に平成15年度の研究での中心課題を項目別にあげと、1)巨大共鳴のアイソスピン依存性と芯偏極効果。 連続状態を取り入れた座標空間での線形応答関数を用い^<20>Cや^<60>Ca等のスキン原子核と、^<12>Cや^<40>Ca等の安定核の巨大共鳴を比較し、そのアイソスピン依存性を中性子スキンと連続状態の効果取り入れて検討した。この中で、アイソスカラー型巨大共鳴はアイソスピン依存性が大きく、アイソベクトル型巨大共鳴にはアイソスピン依存性がほとんどないことを明らかにした。また、このような巨大共鳴のアイソスピン依存性が4重極電気遷移にたいする芯偏極効果に明確な効果を持つことを、C同位体で明らかにした。芯偏極効果は、項目3)でも述べたようにB同位体の4重極モーメントの実験結果との比較により理論的計算の正当性が確認された。 2)RPA線形応答関数への対相関の効果の導入。 従来のRPA線形応答関数の応用は、球形核の主に閉核構造を持つ原子核に限定され、対相関が重要になる非閉核構造を持つ原子核、特に低いエネルギーの集団運動状態へは応用が難しく、定量的な議論が制限されていた。我々は、対相関に対するBCS理論を採用し、quasi-particleとしての相関を線形応答関数を取り入れ、その効果を研究した。特に、positive parityとnegative parityの低い励起エネルギーの集団運動状態に対する対相関の違いを明らかにした。 3)中性子スキン、非対称核物質の状態方程式及び対称エネルギーの関係。 中性子スキンの存在はN>Zの原子核では、実験的に一般的性質として検証されている。この中性子スキンの厚さと非対称核物質の状態方程式の圧力の相関に関する研究が最近注目されている。我々は、安定核及び不安定核の中性子スキンの厚さと中性子核物質の状態方程式の圧力との関係、および中性子スキンの厚さと対称エネルギーの関係を系統的に計算し、その定量的相関関係を明らかにした。また、中性子核物質の状態方程式を決定するための実験的情報の確立についても議論した。
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