クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)や超新星内部(SN)等の非平衡量子場系の研究の最終目標は、系から放射される様々なシグナルの解析、及びそれを通じて系の様相の時間・空間的発展を決定することである。この目的めために非平衡量子場系を扱う新しい摂動論の構成を行った。これまでに知られていた標準的摂動論は次の2つの点で不満足なものであった。1)計算の途中段階でピンチ特異性による発散を含んでいる。2)系の様相の変化を記述するボルツマン方程式は理論の枠組みとは直接関連のない考察によって導入される。 摂動論で最も重要な量は系内に存在する種々のモードの伝播関数を決定することである。この日的に沿い、先ず、QGPのグルーオンやSNの光子等のゲージ粒子を含む場の量子論に従う非平衡系内のゲージ粒子の伝播関数を構成した。次いで、QGPのクォークやSNの電子、ニュートリノ等のフェルミ粒子の伝播関数を構成した。これらの伝播関数と有機的に関連した形で、非平衡量子場系を記述する摂動論を構成した。この摂動論では、これまでの標準的なものとは異なり、上述の2つの不満足な点が同時に克服されている。即ち、ピンチ特異性による発散がないため、系からのシグナル発生率等に対して確度の高い計算が可能になると同時にボルツマン方程式が内蔵されているため系の様相の変化が自動的に決定できる。 上で構成した理論形式の応用として、超新星爆発下でのニュートリノの転換、及び崩壊の研究を行った。
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