1.原子核おける虹現象のエアリー構造と気象現象でみられる通常の虹でのエアリー構造の類似性・異質性が詳細に調べられた。気象での虹は箱型ポテンシャルによるものであるのに対し、原子核の虹は表面が大きい畳み込み型のポテンシャルよる散乱により引き起こされており、その機構はまったく異なるものである。模型的レンズを用いて定性的に両者の比較が行われた。原子核での虹散乱は光学でのニュートンのゼロ次の虹に対応することが論じられた。 2.^<16>O+^<16>Oなどの軽い重イオン虹散乱の90度励起関数が示す振動構造のメカニズムが深いポテンシャルを用いて散乱振幅を内部波・外部波に分離する方法で調べられた。特に、^<12>C+^<12>C散乱で特徴的に知られている励起関数のエアリー象(Elephant)の機構が、角度分布のエネルギー依存性を詳細に計算して調べられ、それらが遠側内部波と遠側外部波の干渉により生じることが明らかにされた。 3.^<48>Crの基底回転帯でみられるバックベンディングのメカニズムが半微視的直交条件2αクラスタ模型で明らかにされた。従来この現象は集団運動模型や殻模型で理解されてきたが、クラスタ模型でも理解できることから、^<48>Crは集団運動模型、殻模型、クラスタ模型の3個の異なる様相を同時に示す大変面白い原子核であることがわかった。これはより重い原子核の集団的様相をクラスタ模型の立場から理解することの有用性を示唆するものである。
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