| 研究概要 |
中性子星内部の高密度核物質中で実現が期待される新しいハドロン物質相としてのK中間子凝縮と,ストレンジネス量子数を持つハドロン粒子の一種であるハイペロン(Y)が中性子星物質中に混在した高密度ハイペロン物質との競合関係・共存の可能性を検討した。理論的枠組としては,K中間子-核子-ハイペロン(KNY)間相互作用をカイラル対称性を基に取り入れ,更にYN,及びYY間相互作用を考慮することによって,ハイペロン物質中でのK中間子の分散関係を導いた。その結果,K中間子が有限の運動量を持つp波型(KNY)相互作用に由来して,通常のK中間子の他にK中間子と同じ量子数の集団励起モードが現れ,系がp波型K凝縮に対して不安定になるという,K凝縮の新しい発現機構を見い出した。結果は日本物理学会での講演,国際学会での口頭発表,及び国内での研究会での発表により公表した。またこれらの学会を通じて関連分野の研究者と結果について議論・検討した。更に成果を論文にまとめ,現在Nuclear Physics誌に投稿中である。
今後の課題として,発現したK凝縮が高密度で成長し,系の基底状態となり得るかどうかを調べるため,凝縮相の状態方程式を得,系の特徴を明らかにする。また,現実的諸効果として,他の共鳴バリオンの効果,バリオン間短距離相関などを考慮に入れる必要がある。また,π中間子凝縮とK中間子凝縮の共存問題について,ハイペロンが基底状態にない場合の中性子星物質中で共存が可能であることを,状態方程式を得ることにより予備的な結果として得たが,この問題をハイペロン物質中で検討する必要がある。そのためには数値計算の技術的な困難が伴うため,高度の計算技術の開発を含めて検討する予定である。
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