本研究において電子系における近距離相関の効果を原子核におけるG行列理論を使って調べた。数値計算で求まった電子間有効相互作用には非常に強い非局所性があるが、それをseparable近似と密度行列の展開の方法で殻模型計算に使える有効ポテンシャルを作る理論的枠組みを完成した。具体的な計算は、アイソスピン空間で偏極した核物質におけるG行列の理論に倣って、一般にスピン空間で偏極した電子系に対して行なった。その結果得られる有効相互作用は一般にスピンに依存する相互作用の形で与えられる。有効相互作用の導出の各ステップにおいては近似の正当性が確認され、近時の有効範囲もチェックされた。数値的に得られたポテンシャルは、量子ドットなどのさまざまな物理系に応用できるように、簡単、な形で密度とスピン偏極の関数として表して公表されている。 また、強磁場下での2次元電子系に対する理論実験が爆発的な勢いで進展している現状を踏まえ、強磁場下2次元電子系の記述に、原子核理論の分野で発展したExtended RPA (ERPA)の理論を適用した。数値計算の結果、従来の理論では説明できなかったスピン密度励起や電荷密度励起のスペクトルを見事に説明した。これは、この系において2粒子2空孔の自由度の重要さを明確に示した世界で始めての結果である。特に、スピン密度励起においては、RPAの理論が予測していた低密度での系の不安定性がどのように2粒子2空孔の自由度によって取り除かれるかを明らかにした。また、電荷密度励起においては集団運動状態が低密度領域では、第一ではなく第二励起状態になることをKohnの定理と2粒子2空孔の自由度の働きにより予測している。
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