CANGAROO-II望遠鏡は、この1年間でDAQ用CPU/OSの変更による処理速度の向上等を行い、エネルギー閾値を350GeV(preliminary)まで下げることに成功した。観測目標とした活動銀河核はPKS0548-322、PKS2005-489、PKS2155-304、Mrk421の4つのHBLである。このうち、PKS2005-489については、8月にRXTEとの同時観測を、9月にはRXTEを含む多波長同時観測を、PKS2155-304とPKS0548-322については、8月と12月にそれぞれRXTEとの同時観測を行った。これらの観測期間中は、各天体は低活動状態にあった。Mrk421に関しては、1月から現在にいたるまで高活動状態に入っており、10TeV領域という超高エネルギー領域での観測を行い、目下鋭意解析中である。PKS2005-489とPKS2155-304は解析が順調に進んでおり、3月末より国際会議や学会での発表を予定している。現在の予備的な結果では、いずれの活動銀河核からも統計的に有意な信号は得られていない。PKS2005-489についてはオンソーススキャン33時間、オフソーススキャン31時間の観測で2σのフラックス上限値7.0×10^<-12>cm^<-2>sec^<-1>(>350GeV)を得ている。また、PKS2155-304については、オンソーススキャン36時間、オフソーススキャン35時間の観測で2σのフラックス上限値6.9×10^<-12>cm^<-2>sec^<-1>(>350GeV)を得ている。これらの上限値はいずれもStecker et al(1996)の予言値とほぼ同レベルであるが、彼らは銀河間赤外吸収を過大評価しているため、実際にはここで得られた上限値はSSCモデルにかなりの制限をつけることができるはずである。来年度は、7m鏡のデータも加えさらに解析を進めるとともに、RXTEなど他波長の観測結果を入手し、超高エネルギーガンマ線の観測結果と合わせてSSCモデルについて検討する。
|