研究概要 |
原子核のアイソスピンとスピンの関与するインパクトに対する応答を調べるべく,入射エネルギー346MeVと494MeVの^<12>C,^<40>Ca(p,n)反応の微分断面積と偏極移行係数の実験結果を、我々の開発したDWIAと連続RPA法を用いて解析した。その結果アイソベクトル・縦スピン断面積が大きな移行運動量領域で通常の殻模型の与える予言値よりエンハンスされていることを確認し,これにより久しく捜し求めていた原子核におけるパイ中間子凝縮の前駆現象はじめて見出した。 しかしながら,アイソベクトル・横スピン断面積の測定値が同じ枠組みの理論での予言値より異常に大きいこと、また電子散乱の実験結果の与える予想値よりもやはり異常に大きいことが確認され,新たな問題に直面した。 解析に当り実験を再現するべく,連続RPA計算に現れるランダウ・ミグダル・パラメータg'NN, g'N_Δと有効核子質量m^*を調節した。その結果得られたg'NN≒0.6-0.7,g'N_Δ≒0.3-0.4,m^*≒(0.6-0.7)mなる値は,運動量移行がほぼ0であるガモフ・テラー遷移のデータから得られた値とコンシステントであり,用いた模型の妥当性が裏付けられた。 従来国際学会等での発表に留まっていた開発した理論の定式を詳細な形で欧文ジャーナルに発表し,多くの人が活用できるようにした。研究成果はイタリアでの国際学会での発表,日本物理学会誌の解説で紹介し,ラテンアメリカ原子核シンポジウムで若い人を啓発する講演も行った。
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