研究概要 |
原子核のスピン・アイソスピン・モードに対する応答関数を準弾性散乱領域の(P,n)反応で調べ,特にパイ中間子凝縮の前駆現象に着目して研究を進めてきた。 前年までの成果を踏まえ今年度は, 1.入射エネルギー346MeVの^<12>C(P,n)反応の微分断面積と偏極移行係数の移行運動量依存性(q=1.3,1.7,2.0fm^<-1>)を調べた新たな実験結果を、我々の開発した歪曲派インパルス近似と連続ランダム位相近似を用いて解析した。理論と大局的には整合性する結果を得た。 2.反応機構として2段階過程の寄与を,有効質量と分散幅の効果を取り込んだ応答関数を用いて評価した。その結果従来,縦スピン断面積のエンハンスは理論と整合しているが、横スピン断面積が理論より異常に大きいという問題の解決に大きく近づいた。 3.^<40>Ca(P,n)反応も含めた解析の結果,得られた有効相互作用を規定するランダウ・ミグダル・パラメータg'NN,g'N_Δは,運動量移行がほぼ0のガモフ・テラー遷移のデータから得られた値と整合していた。 4.解析の結果は,実験結果の初歩的な解析から従来否定的であったパイ中間子凝縮の前駆現象が,理論の予言どおり準弾性散乱に見られることを強く示唆するものであった。 5.ガモフ・テラー遷移の解析も再検討し、デルタ粒子を含む和則を導いた。
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