今年度も、ニュートリノ、高次元理論、アノマラスU(1)などの側面から世代構造を検討した。素粒子物理学の現在の最も大きな謎である「世代構造の起源」にせまる新しい発展のあった年であった。 (1)申請者は、この謎を解く鍵が太陽・大気ニュートリノ振動から得られた大混合角の存在であると考えるのは今でもその通りで、統一模型の枠組みではパラレルでない世代構造をだすためのtwisting mechanizumがこの原因であることをE6大統一模型の枠組みの中で検討した。 (2)太陽ニュートリノの大混合角がもっともらしいという報告を受けて、これをE6模型などの大統一理論の枠内で実現するかに焦点を合わせて検討した。 (3)この1年はアノマラスU(1)が、理論的には非常に面白いということが明らかになった。そして従来検討してきたE6模型とこれとを結びつけることによって、新たな統一模型の可能性が出てきた。ニュートリノ振動によるもっともらしい解としては、bi-large混合角の可能性が高くなってきたが、E6模型でこれを出す1つの可能性を示した。 (4)超弦理論にあらわれるアノマラスU(1)の違いによる世代構造については、ニュートリノを標的にして検討した。最近では、単にフェルミオンの質量だけでなく、いわゆるGUT近辺に現われるスケールの階層性をも説明できることを発見し、この枠組みに重点をおいた。 階層構造のなぞを解く可能性の1つが異次元に広がった素粒子像であるが、今年度は、このアノマラスU(1)に焦点を当てた。将来、両者には何らかのつながりがあることを期待している。今年度は「4次元を超える物理と素粒子論」(共立出版)を中野氏と共著で出したが。これは大変勉強になった。新潟・山形大学合同の合宿型研究会に参加し「ニュートリノと統一模型」という解説講義を行った。
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