研究実績は次の通りである。 (1)アノマラスU(1)と世代構造:U(1)ゲージ対称性を持った大統一理論をもちいれば、ヒッグズセクターの質量のスケールまで含めて計算できる。このアノマラスU(1)の構造を用いて、従来未知だったヒッグスポテンシャルが予言すべき対称性の破れのスケールを予言できる。このU(1)をフルに使った模型の検討を前川氏と行った。 (2)統一模型の基本問題(triplet-doublet splitting):統一理論が有望であることが、ますます確からしくなってきたことをうけて、今まで指摘されつつ未解決であった、統一模型の基本的な問題点、triplet-doublet splitting)問題に挑戦した。ヒッグス粒子を「対称性の破れに伴う南部-ゴールドストン粒子」として定式化し、E6理論にもとづいて現実的な模型を構築した。さらに、それがゲージ結合定数の統一を破らないためには、SU(5)の10+10^<∧*>表現になるのが唯一の可能性であること、を明らかにした。また、これから派生する陽子崩壊を検討した。 (3)アップクォークとニュートリノ質量行列:次に、新しい仕事として、小原みどり氏との成果を報告する。「ニュートリノ」bi-large mixingの重要性に着目して、アップタイプの対称性を導入してアップクォークの質量の関係を求めた。Froggatt-Nielsen構造による説明とは異なり、質量行列の{ゼロ構造}が重要になってくることを証明し、この模型で、クォークの質量行列を決めると、レプトンの行列は一意的に決まる。このため、非常に正確な予言ができるのが特徴で、逆に模型が自然を再現しているかどうか、実験で明確に確かめられる。小原氏とはこの方向で計算を進めており、すでに論文を発表しているが、詳細な検討が現在進行中である。 (4)KamLANDの実験結果が報告され、ニュートリノのBI-large mixing構造がほぼ決定的になった。また質量差についても実験値がより正確に与えられた。ニュートリノ質量については模型は絞られ、統一模型が満たすべき条件が絞られてきた。そこで、九後氏と共同で議論を進めて、2つに典型的なタイプがあることを明確にした。
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