1.CHAOSグループのパイ-核散乱の実験結果が、原子核中でカイラル対称性の部分的に回復に伴うシグマ中間子あるいはそのチャンネルでのスペクトル関数のソフト化として解釈できるということが、カイラル対称性の表現によらず成り立つことを示した。すなわち、線形および非線形のカイラル模型に拘らず、核媒質中でのI=J=0チャンネルでのパイ-パイ散乱の断面積が2パイ中間子閾値付近で特異的に増大することを示した。この増大の原因は核媒質中でのカイラル凝縮体の減少、すなわち、カイラル対称性の部分的回復である。我々はさらに、非線形模型におけるこの増大の原因となる相互作用が4π-NNバーテックスとして与えられることを示した。 2.Disoriented Chiral Condensateの形成のようなカイラル相転移の動的過程を記述する有効方程式が拡散型になるか波動型になるかを調べることを目的として、NJL模型から出発して時間に依存するGinzburg-Landau(TDGL)方程式の整合的な導出を試みた。この微視的な導出は微分展開の係数が発散し困難であることはAbrahams-Tsunetoの古典的仕事以来よく知られている。我々は、ランダウ減衰によるこの発散が微分方程式の摂動解に現われる「永年項」と同種のものであることを同定し、くりこみ群法による「総和」により有限の微係数が得られ、TDGL方程式が整合的に導出可能であることを示した。これは、我々の知る限る、40年来の問題をはじめて解決したことを意味する。
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