研究概要 |
(1)有限密度系でのカイラル対称性の部分的回復にからめた我々によるCHAOSグループの実験(1996)の結果の解釈が1999年に出版されたあと、カイラル摂動論を出発点とする非線形シグマ模型ではCHAOSグループの実験はどのように理解可能かという問題が提起された。問題は、非線形模型でどのようにカイラル対称性の回復を取り入れるか、また、それに関連して、媒質効果を取り入れた非線形模型はどのような項からなるかということである。我々(Jido-Hatsuda-Kunihiro,2001)は、簡単な線形模型から出発して媒質中での非線形有効模型を導くことを試みる研究を行ない、その結果、従来用いられている非線形模型には、自由空間では効かないが核媒質中では大きな効果を生み出す項が取り入れられていないことが明らかにされた。 さらに、(d, He)反応によるシグマ中間子原子核を生成する可能性についての理論計算については、この分野の専門家である比連崎氏らとの共同研究を行い、Nucl. Phys.に投稿中である。 (2)有限温度、特に非平衡の過程の解析、たとえば、Disoriented Chiral condensateを記述する有効方程式は、確かに拡散型の時間依存ギンズブルグ-ランダウ型になり得ることを根本幸雄氏との共同研究で示し、2001年春の学会で発表した。 さらに、Disoriented Chiral Condensateなどの非平衡相転移を記述する有効理論を導く一般的方法を「くりこみ群法」にもとづいて与えた(Hatta-Kunihiro)。 これにより、与えられた微視的な理論からゆっくりした運動としての運動学的方程式や流体方程式が一般的かつ統一的に導かれる。
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