本研究の目的は (a) γ+d→K^++Λ(Σ)+N (b) γ+^3He→K^++Λ(Σ)+N+N (c) e+d→e+K^++Λ(Σ)+N (d) e+3^He→e+K^++Λ(Σ)+N+N 反応でのinclusive、exclusive断面積、偏極量などの系統的な解析を行い、K中間子の生成過程および終状態でのハイペロンー核子間相互作用の知見を得ようというものである(Nは核子の略)。 本年度当初の計画は、^3Heを標的とする反応(b)、(d)の数値計算を進めることであった。しかし、米国、Thomas-Jefferson研究所で行なわれた実験結果の解析が進展せず、直ちに実験との比較が行なえない現状であることが分かり、クォーククラスター模型によるハイペロン-核子相互作用を上記(a)〜(d)の反応に導入することを優先的に検討した(研究発表の欄、参照)。最近の^3_ΛH、^4_ΛH、^4_ΛHe等の軽いハイパー核の厳密計算の結果、中間子交換描像に基づくどのハイペロン-核子相互作用も、これらの束縛状態を系統的に説明できないことが判明した。その結果、クォーククラスター模型によるハイペロン-核子相互作用も注目に値する。しかし、この模型では、2体共鳴群法(RGM)による積分核をこのような少数系の厳密計算に使う場合、自明でない理論的問題が生ずる。例えば、2体RGM方程式のredundantな解であるPauli禁止状態のとり扱いである。研究代表者、宮川は、藤原義和氏(京都大・理)と共同して、この問題を検討し、2体RGMの積分核の情報を、このような少数系での解析に最大限に生かす定式化に成功した。現在、この相互作用を反応(a)、(C)の数値計算に導入することが進められている。
|