研究概要 |
タングステン酸鉛(PbWO_4,PWO)に3価の希土類イオン(La^<3+>,Gd^<3+>,Y^<3+>等)を1-8%程度ドープする事によって非常に重く(密度8.28g/cm^3)、応答が速い(2-3ns)チェレンコフ放射体が出来ることをまず放射性アイソトープを用いて確認した。KEKの陽子シンクロトロンからのビーム(500-1000MeV/cのパイ中間子及び陽子)を用いた測定で、例えばLa^<3+>を8モル%ドープすると,シンチレーション強度は約1/20に減少し、これは光速に近い荷電粒子のチェレンコフ光強度の1/5程度に相当する。放射線耐性は日本原子力研究所(高崎)の^<60>Co照射施設でガンマ線量を1k、10k、100kグレイ(10メガラド)と変えて調べた結果、線量を変えても透過率の変化は小さく、100kグレイまで実用出来ることがわかった。 同時にPWOの特性をより深く理解するために10-20種の異なるイオンの添加がシンチレーション特性に与える影響をしらべて4価のイオン(Th^<4+>等)も3価の希土類イオン同様、シンチレーター特性を大きく改善する事を見いだした。医療診断機器への利用の為に、チェレンコフ物質の創製とは逆に光量を増やすためのドーピングイオンの探索も行った。 K/π弁別のもう一つの方法は薄い検出器中でのエネルギーデポジットdE/dxを測定する事で、この為にシリコンストライプ検出器の開発も平行して行った。92x92mm^2の大きさの検出器、前置増幅器、波形整形増幅器を開発、製作し、ビームテストをおこなった。結果は良好で動作が安定で有望である。シリコン面に毎秒10^7個の高い頻度で荷電粒子が来ても動作は劣化しない。プラスチックシンチレーターの細い短冊状のものを並べるの普通のやり方と比べて物質量を大幅に減らせる、信号が大きくエネルギーデポジットの分解能が良くなりK/π弁別の能力が向上する、短冊間の不感領域が無い等の優れた性能を持っている。この結果、BNLでのK^+→π^+νν稀崩壊実験(E949)で使う可能性も検討中である。
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