ガンマ線バーストのX線残光(afterglow)スペクトルに、鉄の輝線や吸収端構造が見られることは既に指摘されていた。しかしその輝線を使ってガンマ線バースト源までの距離を赤方偏移で算出しようとすると、(1)その輝線が本当に輝線かどうか。(2)そしてどのような電離度の輝線か?(3)最も重要なこととして、どのようなエネルギーかが問題となる。それを知らないでは距離を算出できない。今年度に書いた論文では、エネルギー分解能の悪い検出器では輝線のように見える構造が実は輝線では無く吸収端を見ている場合もあること、しかもプラズマが必ずしも平衡状態ではなくて、電離非平衡としないと説明ができないこともあることを初めて示した。そのような考察を経て、正確なスペクトル構造のエネルギーが決まり、ひいてはガンマ線バーストの発生源までの距離が正確に求められたのである。村上は電離非平衡状態での鉄の輝線と吸収端の強度比を求めるコードを都立大学の政井氏と開発した。 柴崎は、中性子星の回転はその内部を貫く超流体渦糸によって決定されるが、渦糸の平衡形状にはキンクが存在すること、および渦糸に励起される波の振動数に最小値があることを見つけ論文とした。さらに、これらの結果をもとに、渦糸は原子核にピン止めされていることを示した。
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