研究概要 |
熱揺らぎが著しく減少する低温において重要となる量子揺らぎと相転移との関連を見出すために、酸素同位体置換したチタン酸ストロンチウム(SrTi^<18>O_3,以下STO18と略する)の相転移をラマン散乱により調べた。試料作成時に導入されたと思われる空孔を核とした微小強誘電クラスターが存在し、その大きさが温度低下とともに成長する事を見出した。低温相である強誘電相においてソフトモードは存在せず,従って上述のクラスターが結晶全体を覆う事により相転移が実現することを結論した。酸素同位体置換されていないチタン酸ストロンチウムにおいて微小強誘電クラスターが同様に発生するが、強誘電相への相転移はみられない。従って,クラスターの成長過程に量子揺らぎの重要性が存在すると推定でき,今後の課題である。 水素結合系での量子揺らぎと相転移の関連を、ゼロ次元水素結合系といわれているRb_3H(SeO_3)_2を試料として研究を継続中である。水素の一部を重水素に置換し、水素もしくは重水素の相転移にかかわる運動の緩和時間を求め、この緩和時間の温度変化指数と置換率との関連を知れば,量子揺らぎと相転移の関連が明らかになる。現在置換率の違う3種類の試料についてラマン散乱測定を終わり,解析中である。さらに置換率の異なる試料での測定が必要である。
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