研究概要 |
本研究の目的は、軟X線磁気カー効果の入射角依存性を利用し、磁性多層膜を構成する物質の表面からの順位を特定して各層個別の磁化を測定できる方法を開発することである。 カー回転測定に必要な多層膜偏光子を作製するための設計指針を導出した。これは一般の場合にも適応できるものである。次いで、多層膜を作製し、磁場発生装置、試料支持台、回転検光子ユニットからなる測定装置を設計・製作した。その後それらを用いて、CoとNiの薄膜のM_<2,3>吸収端近傍における縦カー回転角とファラデー回転角を分子科学研究所の放射光施設(UVSOR)で測定し、両者からの結論が妥当なものであることを確認した。上記の成果は、第13回真空紫外線物理学国際会議(平成13年7月、トリエステ)で発表した。さらに、磁性多層膜Co/Ptについてファラデー回転の測定を行い、磁性多層膜でも十分磁気旋光分光が可能か確認した。対象とした内殻準位はCoのM_<2,3>およびPtのN_<6,7>である。試料作製装置はイオンビームスパッタ装置である。試料はコロジオンを基板に作製した。これら試料のいくつかに対しては確認のため磁化率測定を申請者と同じ研究所の島田研究室の装置を借りて行った。Co/Ptのファラデー回転では、非磁性のPtが磁化することを見出した。また、各物質の厚さと磁化の関係について興味深い結果を得た。最後に、磁性多層膜Co/Cuのカー回転の測定をCoとCuのM_<2,3>吸収端近傍で行った。試料は酸化マグネシウム基板に作製した。カー回転測定については現在測定結果を解析し磁化の層順位依存性などを求めている途中である。
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