2年度にわたる本研究の目的は、100GPaの極限条件下で形成されるよう化スズ(SnI_4)の圧力誘起アモルファスの構造を明らかにし、分子性結晶の高密度状態における物性の系統性を明らかにすることにある。 初年度の平成12年度は、新たなデザインのダイヤモンドアンビルセル(DAC)を製作する一方、大型放射光施設SPring-8のBL04B2ステーションにおいて、SnI_4アモルファス相の回折実験を行った。非常に短い波長0.203Åの高エネルギーX線(約60keV)を使った角度分散法で、DACで加圧した試料について約0.5-16Å-1の広い波数空間で回折パターンを測定できた。圧力35、45、55GPaでアモルファス状態の散乱強度を、63GPaで分子解離結晶相の回折強度を測定した。後者の測定から非干渉性散乱、試料とダイヤのコンプトン散乱を含んだバックグラウンドを見積もり、それをアモルファスの散乱強度から差し引く方法がうまくいって、アモルファスの構造因子S(Q)および動系分布関数G(r)を求めることに成功した。G(r)の検討の結果、SnI_4は「四面体分子」としてはいずれの圧力においても存在しないことがわかった。アモルファス状態は「分子性液体の凍結」構造ではなく、大気圧下で見られる金属ガラスに類似した構造をもつことが判明した。以上の結果を論文にすると同時に8月の高圧力国際会議(中国)で発表の予定である。
|