本研究の目的は、四面体分子結晶SnI_4の高圧力下におけるアモルファス化現象の機構を解明することにある。その主要なゴールは、放射光X線を用いる高圧力下のアモルファス構造解析実験法を確立し、その手法を適用して広い圧力範囲でアモルファスSnI_4の原子スケール構造を明らかにすることにある。 初年度は、新たなデザインのダイヤモンドアンビルセル(DAC)を製作する一方、目的の実験が遂行できるように大型放射光施設SPring-8・BL04B2ステーションを整備した。続いて、SnI_4アモルファス相の回折実験を圧力35、45、55GPaで行い、非干渉性散乱の除去などの強度見積りに種々の工夫して、構造因子S(Q)および動系分布関数G(r)を求めることに成功した。その結果、「SnI_4四面体分子」は上記いずれの圧力のアモルファス状態においても存在しないこと、すなわち分子破壊(解離)がすでに完了しており、その構造は剛体球をランダムに充填した構造に類似すること力判明した。 次年度は広く研究を展開した。回折データの解析から、減圧過程約2.5GPaにおいて、分子の再形成を伴うアモルファス-アモルファス相転移を発見した。これは最近見出された、液体リンの分子性-ネットワーク構造液体相転移に類似すると考えられる。さらに、高温高圧力下のアモルファス-結晶相転移、ヘリウムを使った純静水圧条件下でのアモルファス化現象、放射光核共鳴散乱によるメスバウアー分光実験などを研究した。圧力誘起アモルファスSnI_4の安定性、原子スケールの構造、電子状態について得た知見を総合してアモルファス化現象の機構を考察中である。一部は、2001年8月の第18回高圧力国際会議(北京)および、9月の第11回液体・アモルファス金属国際会議(横浜)で発表した。
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