今年度は光励起下での縦型二重ドット配列の遠赤外磁気光吸収測定を行った。二重ドット構造はGaAs/AlGaAs変調ドープ量子井戸構造試料を用いることで作成し、遠赤外磁気光吸収測定より二重ドット構造が形成されていることを確認できた。さらに我々の見いだした光誘起による閉じ込めポテンシャルが変化する効果を利用し、縦型二重ドット配列の2つのドットの内、上側のドットの閉じ込めポテンシャルのみを変化させることができた。これによりドット間の距離を変化させ、ドット間の結合の変化に起因する2つの磁気分散曲線を調べ、電子間相互作用の知見を得ることができるが、光照射したでのドット内電子の共鳴ピークのシフトはポテンシャル変化と結合変化によるため、これらの効果を分離する必要がある。このために二重ドット内電子の量子化エネルギー準位などの定量的な情報を得るため、有限要素法による自己無撞着なポテンシャル計算を行った。計算は縦横方向の閉じこめ効果を独立に取り扱うことでおこない、現実の試料に合うように行った。また光照射効果を表面ポテンシャルの減少、AlGaAs層の空乏層の減少として計算に取り込んだ。この計算の結果、空乏層長変化、表面ポテンシャル変化のいづれでも、二層のドットの間隔が変化することが分かった。しかしながら光照射効果として妥当であるのはAlGaAs層の空乏層長の変化であることも分かった。 現在、これまでの計算と実験結果に基づき、より詳細な実験と計算を行いドット間結合の変化とそれによる電子間相互作用変化を測定中である。
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