1)GaAs/AlGaAs二重ヘテロ構造を用いて、縦型二重量子ドット構造を作成し、2層のドットの電子による吸収ピークを観測した。このドット構造における縦方向のバリア層であるAlGaAs層をパルスバンドギャップ光で励起した場合、励起強度、遅延時間変化とともにピークシフトを観測した。このピークシフトには2層のドット間の結合状態に関する情報が含まれることがシミュレーションより分かった。 2)さらにこの結合状態変化を定量的に調べるため、短パルスレーザーを用いて高速時間分解光ルミネッセンス測定装置および時間分解光検知サイクロトロン共鳴測定装置を作成し、量子ドット構造作成の元となるGaA/AlGaAsヘテロ接合試料中の2次元電子系(2DEG)の発光ピーク(Hバンド)の励起光依存性を調べた。Hバンド発光が励起光の波長に強く依存すること、発光の時間変化が短パルス励起光以外にAlGaAs層を励起するために加えた光照射により特徴的なテイルを持つことが分かった。AlGaAs層の励起により生成された電子-正孔対の内、電子はポテンシャルに影響し、正孔はGaAs層に流れ込むことを明らかにした。このことは量子ドット構造の光誘起ポテンシャル変調結果を裏付けるものと考えられ、結合量子ドット構造における結合変化の基礎を与えるものと考えられる。 3)このような遠赤外磁気光吸収測定をInGaAs/InAlAsヘテロ接合試料に適用した結果、ゼロ磁場スピン分離エネルギー、Δ_Rを求めることが出来た。この測定はΔ_Rを系統的に調べる手段となることを示し、さらにバリア層であるInAlAs層の光励起により、Δ_Rを光の強度、パルス光励起後の遅延時間によりコントロール出来ることも分かった。これらは上で述べた光誘起のポテンシャル変化に基づいており、今後ヘテロ接合のさまざまな物性測定に応用できることも分かった。
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