研究概要 |
1 短波長発光のスペクトル測定は秩序構造をとるGaInP層(〜1.92eV)を励起せず、GaAs層(〜1.51eV)を励起する長波長励起光として半導体レーザーダイオード素子(波長〜780nm,〜680nm)を用いて行った。既存の〜780nm光源(光出力〜15mW)は劣化が進んで光出力が大幅に低下してきた。そこで予定を変更して、より高出力の光源(最大光出力60mW)を新たに設計して製作を依頼、購入した。 2 励起光源のスペクトルのすそ部分が観測したい短波長領域にしばしば重なることが判明した。この影響の除去には例えば680nm以上の長波長カットフィルターの使用が時として有効である。 3 秩序構造GaInP/GaAs量子井戸構造において考察すべきヘテロ界面は結晶成長方向に沿って上下2つの界面である。どちらの界面が直接的に短波長発光に関与するかを調べるために、元の量子井戸構造の他に、薄いGaP層を下界面に挿入、上界面に挿入、上下両界面に挿入することで区別した4種類の試料を用いた。 4 薄いGaP層を上下両界面に挿入した試料を除く3種類の試料で、650nm近傍で短波長発光が観測された。同時にGaAsバンドギャップ(〜1.51eV)よりも小さなエネルギーで優勢に観測される〜1.46eV発光を検討した。界面構造の違いから、各試料のスペクトルの詳細は異なるものの、短波長発光、〜1.46eV発光はいずれもGaP層を持たない界面を挟んでの遷移過程に関係する現象である可能性が高い。GaInPが秩序構造をとる場合のバンド不連続はType-IIでしかも伝導帯での不連続が小さい(ほぼ縮退している)ならば、これら測定結果の合理的な説明が可能である。
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