研究概要 |
M0VPE成長のGaInP/GaAs量子井戸構造では量子井戸QWからの発光がしばしば1.35〜1.46eVでの異常な発光により隠される。GaInPとGaAsとの界面に薄いGaP層を挿入することによりQW発光が回復する。CuPt型秩序構造GaInPの存在が光学特性を複雑にしている。我々は励起光よりも高い光エネルギーでの発光(短波長発光)および通常の発光を測定し、部分的秩序構造GaInP/GaAs界面を研究した。 1.波長488nm(2.54eV)で励起した通常の発光では、上下両界面に薄いGaP層を挿入した試料でQW発光(〜1.53eV)が観測される。しかしどちらかの界面にのみGaP層を挿入した試料では半値幅の広い〜1.46eV発光が優勢で、それにGaAsバンド端近傍の弱い発光ピーク(1.51eV,1.49eV)が観測される。高圧力下の測定から〜1.46eV発光は界面を挟んだ空間的間接遷移の発光であることを示唆する結果を得た。 2.波長783nm(1.58eV)で励起(GaAsバンドギャップ<励起光エネルギー<GaInPバンドギャップ)の場合、この〜1.46eV発光は非常に弱くなりGaAsバンド端での発光は強くなった。同時に短波長発光が〜1.89eVで観測された。そのピークエネルギーは秩序構造GaInPの通常の発光ピークに対応する。〜1.46eV発光が観測されない両界面にGaP層を挿入した試料では短波長発光も観測されない。これらの結果は短波長発光と〜1.46eV発光がGaInP層に光励起された電子の存在に強く関係していることを意味している。 3.最近の理論解析ではGaInPの秩序化度が大きくなると上記ヘテロ界面はType IIとなるとされている。短波長発光は二段階の二光子吸収過程で励起されたキャリアーがバンドギャップの大きなGaInP領域に拡散、再結合として、また〜1.46eV発光は界面を挟んだ空間的間接遷移による発光として説明ができる。観測された二種類の発光はType IIバンド不連続の新しい証拠となる。
|