研究概要 |
本年度は研究初年として以下のような研究を行った。 まず、2元混晶A_xB_<1-x>を用いた量子井戸構造(N_x×N_y×N_zの単純立方格子)のうち、薄膜(準2次元)および細線(準1次元)の電子状態について、その組成xと成分原子の相対ポテンシャル差Δ/t、井戸層の幅による依存性を理論的に調べた。計算手法は無限のバルク混晶で有効性の保証されているコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を有限の大きさをもつ量子井戸構造へと拡張した。乱れの効果は準粒子スペクトルのself-energy=coherent potentialΣとして取り込まれるが、まずΣがサイトに依存せず、系全体で同一であるとの近似のもとで、CPAを拡張した。そこで得られた方程式を解析的あるいは数値的に解き、電子状態密度と光吸収スペクトルの形状を計算した。数値計算はワークステーション(Compaq XP-1000)を購入し、数式処理ソフトMathematicaを用いて研究の迅速化を図った。以上の結果、次のことが判明した。 一般に、x=0,1のときSlab(∞,∞,N_z)やWire(∞,N_y,N_z)では状態密度ρ(E)はN_z(またはN_yxN_z)個のsubbandに別れ2(1)次元van-Hove singularityを示し、Dot(N_x,N_y,N_z)ではN_xxN_yxN_z個の孤立準位からなるが、混晶(x≠0,1)ではそれがボケてくる。組成x(または1-x)が小さいとき、B(A)不純物バンドが最低(最高)subbandの下(上)にΔ/tの値によらず必ず現れるが(persistent type)、Δ/tが小さいときは、x(または1-x)の増加とともにhost subbandに融合していく(amalgamation type)。 なお、得られた研究成果は、国内では物理学会と応用物理学会、またアメリカ材料学会において発表した。
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