昨年度までに、2元混晶A_xB_<1-x>を用いた量子井戸構造のうち、薄膜(準2次元)および細線(準1次元)と箱(準0次元)の電子状態について、その組成x依存性と井戸層の幅依存性を理論的に調べた。そこではcoherent potentialΣがサイトに依存せず、系全体で同一であるとの近似のもとで、CPAを拡張し、電子状態密度と光吸収スペクトルの形状を計算した。 本年度は、これらの結果を踏まえて 1)電子のtransfer energyに異方性、すなわちband構造に異方性がある場合への理論の拡張を試みた。energy spectrumの次元性は定性的には井戸層の次元性で決まり、元々のband構造の異方性は定量的な差として効いてくることが分かった。 2)本理論は多元混晶系A_xB_yC_z…にも拡張することができるが、特に混晶井戸層A_xB_<1-x>中に他の不純物Cが入った場合について、束縛電子状態の計算ができるように本理論を拡張した。 3)2)をもとに、混晶井戸層A_xB_<1-x>中での電子の自己束縛および外因性自己束縛の出現条件を、井戸層の幅が狭い極限について明らかにした。 以上、得られた結果は、本論文として現在取りまとめておりJpn. J. Appl. Phys.に投稿予定である。なお主要な結果については速報として物理学会およびドイツのブレーメンで開かれたII-VI族半導体国際会議にて発表を行った。
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