研究概要 |
本研究では、はじめに無磁場中での熱CVD法によるカーボンナノチューブの合成について考察を行った。合成はNi, FeあるいはNiとFeとの混合触媒金属薄膜をSiO_2およびc-Si基板に堆積し、NH_3ガスによりエッチング処理をほどこした後、主としてC_2H_2ガスを用いて行った。走査型電子顕微鏡および透過型電子顕微鏡により合成物の評価を行った。合成条件にも依存するが、直径数十nm程度のカーボンナノチューブ、直径200nm程度のカーボンナノワイヤーおよびミクロンオーダーのグラファイト粒が混在することがわかった。そこで、これらの起因について考察を行った結果、エッチング処理により種々のサイズの金属粒子が形成されており、ナノチューブ、ナノワイヤーおよびミクロンオーダーのグラファイト粒はそれぞれ数十nm程度、数百nm程度およびミクロンオーダーの触媒粒子を中心として成長していることがわかった。この相関関係はカーボンナノ物質の構造を制御する上での重要な知見であると考えられる。 次に上記方法によりヘテロナノチューブの合成を試みた。窒素置換はC_2H_2ガスにNH_3ガスを、ホウ素置換はC_2H_2ガスにB_2H_6ガスを混合することにより行ったが、条件の最適化が難しく今後の課題である。 以上の知見をもとに、10テスラの強磁場中でのナノチューブおよびナノワイヤーの合成を試みた。磁場用電気炉はSio_2管にFe-Cr線をバイファイラー巻きにし、アルミナセメントで固定し自作した。この電気炉を超伝導マグネットに挿入し合成を行った結果、磁場中で合成を行った方が、チューブの収率が向上し、長さも長くなるという結果を得た。また、オニオン的ナノ構造物が多く合成される傾向のあることも示唆された。さらに、触媒金属の相異による磁場効果の相異もみられた。これらの結果をもとに磁場効果の起因について考察を行っているところである。
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