[1]低温高圧下における固体酸素の構造相転移と相図の解明 放射光源を用いた角度分散法により、固体酸素の粉末X線回折実験を広い温度(10-300K)、圧力(0-15GPa)下で行い、結晶構造パラメータの圧力依存性と構造相転移を詳細に調べ、固体酸素の低温高圧相図を確立した。これまでラマン散乱実験で報告されている結果とは異なりα′、δ′そしてδ相は観測されず、低温では反強磁性を示すα相が広い圧力領域で安定に存在し、7GPa付近でε相へ相転移することが明らかになった。格子定数の異方的圧縮性から、反強磁性秩序が7GPa付近まで保たれていることが示唆された。また、高圧相の磁性に関する知見も得た。以上の結果は国際ワークショップと論文で発表された。 [2]単結晶育成と結晶評価および構造解析 β、δそしてε高圧相の単結晶試料をつくり、Spring-8の放射光源を使って、室温で単結晶の評価と構造解析を行った。 1)β相:6.1GPaで育成したβ相の単結晶を構造解析し、酸素分子の分子軸が3回軸にdisorderしていることを明らかにした。我々は、β相において室温、6.8GPaで格子定数の圧力依存性に異常を観測しており、このdisorderや格子定数の異常と分子磁性体である酸素分子間の磁気相互作用との関連が注目される。(2000年物理学会で発表) 2)δ相:9.7GPaで単結晶育成に成功した。結晶のモザイク構造が大きく、現在熱処理を進めている。 3)ε相:13GPa、16GPaおよび20GPaでε相の単結晶を作成し、キャラクタリゼーションを済ませた。 [3]固体酸素の金属化と超伝導との関連研究 固体酸素と類似の分子性固体である、セレンとリンの圧力誘起金属化が電気伝導測定と赤外分光の実験に基づいて研究され、その結果が国際会議と論文で発表された。
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