研究概要 |
12年度に強誘電体Rb_2CdI_4の自発分極などの物理量を定量的に決定したことを受けて、Rb_2CdI_4と室温以下には相転移の存在しないCs_2CdI_4の混晶系(Cs_<1-x>Rb_x)_2CdI_4について、仕込み組成xによる相転移の動きや強誘電性の出現する様子を観測する実験を行った。この系ではxを増加することによって低温側から次第に誘電異常が現われてくる様子が分かり、x=0.6およびx=0.7の組成においては三つの誘電異常を観測することができた。この誘電異常を高温側からT_<C'>,T_<s1>,T_<s2>とよぶこととする。さらにxを増加するとT_<C'>にT_<s1>がかさなり、この付近のxでは、D-E履歴曲千の観測により強誘電的様相がより明瞭になってくる。したがってRb_2CdI_4の強誘電相転移点T_Cは、それまでのT_CにT_<s1>が重なって新たなT_Cとなったものと考えられる。T_<s2>はRb_2CdI_4のT_sに相当するものと考えている。 もう1つの混晶系として、Rb_2HgI_4とCs_2HgI_4の混晶系(Cs_<1-x>Rb_x)_2HgI_4の測定も行った。Rb_2HgI_4は強誘電体としての分極反転は確定されていないが、D-E履歴曲線の観測により強誘電的様子が観測される物質である。Cs_2HgI_4はCs_2CdI_4と良く似た誘電率の温度依存性を示すもので、室温以下には相転移は存在しない。Cd塩の混晶系と同様にxを増加することで誘電異常が高温側へシフトする様子が観測された。誘電率の虚数部の結果を考え合わせると、x=0.8で三つの誘電異常(高温側からT_<C'>,T_<s1>,T_<s2>とよぶこととする。)が観測でき、さらにxを増加することでT_<C'>にT_<s1>が重なり、新たなT_Cを形成するようであり、これはCd塩の混晶系の結果と良く一致している。また、xを増加することにより融点が低温側に降下してくるのに対し、DTAで追跡したα-β相転移に対応する熱異常は高温側へ上昇していく。やがてある組成でα-β相転移点が融点に到達するため、Rb_2HgI_4にはα-β相転移が存在しえないことが証明できた。 室温でSr_2GeS_4型単斜晶系をとる物質群において、強誘電体はキュリー点T_Cの低温側に肩状の誘電異常(T_sとよぶこととする)を持ち、高温側にはα-β相転移は存在しない。7_C、T_sの誘電異常の存在する物質でも強誘電性が確認できない物質には、α-β相転移が存在する。以上のような傾向は、これまでの研究でほぼ明らかにされていたが、本研究により、明らかになった点を以下に書く。 1)Rb_2ZnI_4など強誘電性の確定できない物質は、混晶系でいうT_<C'>とT_<s1>が捉えられているだけで、本研究の結果からすれば、強誘電性は発生しなくてよいことになる。 2)物理的な意味はどのように考えればよいか分からないが、混晶系のT_<C'>にT_<s1>が重なる点で、すなわち強誘電性が現われる点でα-β相転移点が消失するという傾向のあることが分かった。
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