研究概要 |
アルカリ金属,希土類金属を希ガス中で徐々に加熱して,蒸発させて金属蒸気相をつくった。この金属蒸気相の光吸収スペクトルを蒸発開始から定常蒸発段階まで蒸発位後の時間の関数として測定した。また,蒸気相中の原子や分子の吸収線に合わせた短パルスレーザー光で選択的に励起してフォトルミネッセンスの時間・空間分解スペクトルを測定した。その結果,異常に長い発光寿命の原子発光線を見つけた。この長寿命の原子発光線は次の機構で起こっていると解釈した。 (1)輻射トラッピング(Radiation trapping) 光励起された原子された原子よりの脱励起の伴う発光が近接する他の原子に吸収されて発光し,またその発光が隣接する他の原子に吸収される事の繰り返しで発光寿命が異常に長くなるいわゆる輻射トラッピング現象と見なされる。 (2)高励起リドベルグ状態からの遷移(Emission from highly-excited Rydeberg states) 一光子または多光子吸収過程を通して高励起リドベルグ状態に励起された原子や分子は異常に長い発光寿命を示す。この現象はこれに該当するとも考えられる。 (3)超イオン化状態からの遷移(Emission from superionic states) 一光子または多光子吸収過程を通してイオン化エネルギーよりも上に励起された原子や分子は異常に長い発光寿命を示す。この現象はこれに該当するとも考えられる。 現在までに,上記のいずれの機構が支配的となって長寿命発光が観測されたか考察中である。そして,実験で観測された現象がどのように核生成とナノ粒子成長につながっていくかについて新たな研究を進めている。また,本年7月末に国際共同研究者Raphael Ruppin教授が来日し,理論・実験共同研究が行われる予定である。
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