研究概要 |
ランダウ理論にもとずき、ペロヴスカイト酸化物PbTiO_3,PbZrO_3を基本とする強誘電体混晶のモルフォトロピック相境界の近傍では、自由エネルギーが秩序変数空間でほぼ等方的になっていること、そのため横方向(分極に垂直方向)の電気的、機械的外力に対して、系のコンプライアンスが大きくなることを明らかにした。このことが、モルフォトロピック相境界近傍に位置する強誘電体材料が応用上有用である理由である。本年度迄に、応用上重要な諸物理量の組成依存性(組成は自由エネルギーにあらわれるパラメーターで代表される)、温度依存性等を具体的に示すことができた。また、電場対分極の関係について検討を行い、モルフォトロピック相境界の近傍では、抗電場が小さく、角形度の優れた曲線が得られることを明らかにした。さらに、エンジニアリング・ドメインの振舞いについて検討し、実験的に得られたデータをほぼ完全に説明することに成功した。 モルフォトロピック相境界の近傍に位置する強誘電体材料は線形応答に基づく応用では優れた性能を示すが、核発生または残留反転核にもとずくにスイッチング現象の考察から、メモリー素子としては不適当であることを指摘した。 なおこれらの結果は、強誘電体材料のみならず、同種のモルフォトロピック相境界の応用にもとづく磁性アクチュエータ、磁性センサー等の振舞いにも適用でき、磁性体に関わる疑問にも回答を与えたことになる。
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