当初目的としたバルクのペロヴスカイト型酸化物強誘電体混晶系についての理論は、一応完成した。その間、混晶組成を変えた際、転移温度のみならず、ランダウ型自由エネルギーの4次項の係数が変わり、自由エネルギーが転移パラメーターの空間で等方的になっていることがモルフォトロピック相境界の出現の原因であり、そのためにモルフォトロピツク相境界の近傍で、優れた物性が示されるという主張が国際的にも一定の評価を得、圧電定数の大きな物質をつくり出すための指導原理としての役割を果たすに至り、自由エネルギーがより等方的になる混晶組成を実験的に探索し、圧電定数が極めて大きい混晶が創出されるまでになった(岐阜大安田等)。 つぎに、自由エネルギーの異方性と分極反転過程との関係をLandau-Khalatnikov運動方程式を用いて調べた。その結果、低電場では、分極反転は分極の"回転"により起り、組成がモルフォトロピック相境界に近づくにつれて反転速度があがることが確認された。 さらに、近年エンジニアードドメイン構造として実験的研究が盛んな、分極と平行ではない方向に電場を印加した場合の応答の問題を詳細に調べた。すなわち、正方晶において、[111]方向に電場印加した場合、三方晶において[100]方向に電場印加した場合の履歴曲線を調べ、興味ある履歴曲線の方向依存性を見い出した。履歴曲線上における"とび"の問題を対称性の観点から考察したのは特徴のひとつである。また、圧電定数の方位依存性を調べた。
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