研究概要 |
1.種々の割合の重水(D_2O)を含むコラーゲンゲル中で,二クロム酸カリウム(K_2Cr_2O_7)の結晶成長実験を行い,その実験結果を2001年3月の物理学会で発表した。重水素(D)の同位体効果によって,水素伝達系の水素イオン(H^+)の移動量が著しく疎外されると考えられる。このような原因によって,コラーゲンらせん上での二クロム酸イオン(Cr_2O_7^<2->)の濃度差が減少し,らせん成長の駆動力が低下するのではないかと推測している。このような,らせん結晶成長機構についての試論の一部を中央大学大学院理工学研究科に提出した博士論文の中で公表した。 2.ニクロム酸カリウムのらせん成長の「その場観察」を松下研究室(研究分担者)と共同で行っている。デジタルカメラでコマ撮り撮影を行ない,映像処理ソフトによって連続写真に変換した。これらの映像の解析を通して,この特異な結晶成長の本質を明らかにしようと思っている。 3.特定領域研究(B)(代表:三村昌泰(広島大学))の研究活動の一環として,現在,リーゼガング現象の見直しが行なわれている。我々が発見したニクロム酸カリウムのらせん結晶が新しいリーゼガング現象の一つではないかというアイデイアが,現在,他の研究グループによって提出されている。この研究会(リーゼガング現象とそれに関連した沈殿構造形成)で松下貢(研究分担者)が,らせん結晶成長について総合報告を行い,リーゼガング現象を解明するための新しい視点を提供した(2001年12月13日)。
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