研究概要 |
銅酸化物高温超伝導体の従来型超伝導体と異なる最も興味深い特徴の1つは,擬ギャップの発達が顕著となる低キャリア(ホール)濃度領域で超伝導転移温度Tcを決める特性エネルギーが,ホール濃度pと超伝導ギャップΔ_0の積pΔ_0となることである。この原因を明らかにするため,本研究では,走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて,ビスマス系(Bi2212)及びランタン系(La214)銅酸化物超伝導体における超伝導電子対のコヒーレンス・エネルギーを反映するアンドレーエフ・ギャップを測定し,これがpΔ_0でスケールするかどうかを調べている。これまでに,ホール濃度p〜0.16のLa214のアンドレーエフ・ギャップが低温(T<<Tc)において明らかなった。そして,現在,このホール濃度依存性を詳しく調べている。また,Bi2212におけるトンネル・スペクトルの測定から,超伝導ギャップとほぼ同じスケールの擬ギャップが平均場の超伝導臨界温度付近から徐々に発達していくことを明らかにした。これは,擬ギャップが超伝導の何らかの前駆現象であることを示唆する興味深い結果で,擬ギャップの起源と関連する重要な成果であると考えられる。今後は,トンネル・スペクトルやアンドレーエフ反射の詳細な温度変化の測定から,Tc近傍におけるエネルギー・ギャップの発達の様子を詳しく調べて擬ギャップの起源を明らかにし,Tcを決める特性エネルギーがpΔ_0となる超伝導転移機構の解明に迫る。
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