研究概要 |
充填スクッテルダイト型3元化合物RT4Xl2(R=希土類、T=Fe,Ru,Os、X=P,As,Sb)は、最近国内でも新しい熱電材料として注目を集めているが、我々は強相関電子系特有の多様な異常物性の解明という観点から研究に取り組んでいる。今年度は、これらの系について、結晶場効果とバンド構造に関して新たな知見が得られた。 1.立方対称点群での結晶場効果について。この系の希土類位置は点群Thで表わされる。従来、5つの立方対称点群O、Oh、Td、T、Thでは、結晶場がすべて同じ表式で表わされると信じられていた。群論的考察と点電荷模型による計算より、TとThでは従来の表式に新たに6次の項が加わることを見出した。LS結合で表示された希土類イオンのf状態は結晶場によりいくつかの準位に分裂するが、新しい項により各準位の縮退度は変えないが、一部の準位の波動関数と分裂の大きさに影響を与える。波動関数が変化することにより、非弾性中性子散乱の選択則が変わり、新しい項が無い場合の禁止転移が新しい項により可能転移となる。このことが、一重項基底状態と報告されているPrRu4Sb12の非弾性中性子散乱実験で観測されることを予測した。 2.バンド構造について。FLAPW法と局所密度近似(LDA)でバンド構造を調べている。 (1)非充填スクッテルダイト型TX3(T=Co,Rh、X=P,As,Sb)の電子構造を系統的に調べた。伝導帯と価電子帯のTとX依存性が明らかとなり、CoSb3でのギャップ生成機構を明らかにした。 (2)既に格子定数が報告されているLaを含む充填スクッテルダイト型化合物の電子構造を、やはり系統的に調べ、バンド構造のTとXの依存性を明らかにした。 (3)いくつかのCe系も調べたが、計算した系ではいずれも半導体となり、ギャップの大きさのT依存性は実験と傾向が一致している。 (4)Pr系で報告されている金属-絶縁体転移の起源を解明するため、FLAPW法とLDA+U法によって電子構造を計算中である。
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