研究概要 |
昨年に引き続き、充填スクッテルダイト型3元化合物と非充填スクッテルダイト型化合物の電子構造をバンド理論により系統的に調べた。 1.非充填スクッテルダイト型TX_3(T=Co, Rh, Ir、X=P, As, Sb)およびNiP_3の電子構造。 局所密度近似(LDA)を用いたFLAPW法で系統的に調べ、伝導帯と価電子帯のTとX依存性を明らかにした。結果は、投稿論文として現在纏めている。 2.混合原子価状態を示すYbFe_4Sb_<12>の電子構造。 最近、YbFe_4Sb_<12>が合成され、格子定数、磁化、電気抵抗、比熱、メスバウアー効果やXASスペクトル等の測定結果から、Ybイオンは混合原子価状態にあると報告されている。この系の電子構造を局所密度近似(LDA)を用いたFLAPW法で調べた。Ybの4fバンドがフェルミ準位直下に位置する。またYbマフィン・ティン球内の占有f電子数を同じ結晶構造を持つLaFe_4Sb_<12>のLaマフィン・ティン球内の占有f電子数と比較することから、Ybイオンの局在した4f電子数はほぼ13.4と見積もられ、測定結果と矛盾しない結果が得られた。バンド計算で得られたゾンマーフェルド比熱係数が測定値のほぼ半分となることから、電子間相関の強い系であること示している。 3.Prを含む充填スクッテルダイト型化合物の金属-絶縁体転移の起源。 PrRu_4P_<12>は金属-絶縁体転移を、PrFe_4P_<12>は非磁性相転移を示す。これらの転移の起源は、Ru/Fe原子の平衡位置からの変位を伴ったフェルミ面のネスティングによることを提唱した。Ru/Fe原子の変位とPrイオンの4f状態の基底二重項との相互作用により、Prイオンが四極子モーメントを持ち、結果として反強四極子秩序を生じている。この反強四強子秩序相での電子構造を、LDA+U法を用いたFLAPW法で調べている。
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