1次元反強磁性体CuBenzoateにおける非線形励起であるブレザーをESRで詳細に研究した。理論的に予想されていた励起ギャップの方向依存性と、磁場依存性を精度の高い実験によって検証し、低磁場領域で良い一致を見出した。系がギャップレス状態とギャップのある状態間でクロスオーバーを示すことをESRの線幅と線形の温度依存性から見出した。さらに、偏光依存性の実験から、波数πの励起ギャップを観測することに成功し、ゼーマンエネルギーの補正を含まない、励起エネルギーの直接的かつ精密な決定に成功した。その結果、サインゴルドン模型における結合定数の磁場依存性を実験的に決定することをはじめて可能にした。 CuBenzoateが磁場中で磁場誘起秩序を示さないことを調べるために、ゼロ磁場および強磁場において、最低温度16mKまでのμSR測定を行い、磁気秩序の兆候がないことを確認した。このことは、CuBenzoateが最低3桁程度の温度領域にわたって1次元磁性体として振る舞うことを示しており、それによって生じる強い量子ゆらぎが、ブレザー励起などの非線形励起の原因となっていることを示している。 ブレザーモードの非線形性を示す高次の励起モードをはじめて観測した。その磁場依存性から、複数のブレザー生成を伴う励起の存在を明らかにした。さらに、磁場誘起ギャップと温度が同程度になる温度において、励起状態間の遷移を観測することにはじめて成功した。これは、系の励起状態が、離散的になっていることを示しており量子サインゴルドン模型に特有のな減少と考えられる。
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