我々は量子臨界点近傍におけるスピン揺動の特徴を明らかにするために、高温超伝導銅酸化物と同型の結晶構造を持つ非銅酸化物、2次元Ru酸化物Sr_2RuO_4の誘導体であるCaイオンとの混晶Ru酸化物Ca_<2-x>Sr_xRuO_4系の研究を中性子散乱実験により行っている。この混晶系では一電子バンド幅制御によりSr濃度x=0.5で特異な帯磁率の発散的振舞いが見られ、この濃度で常磁性金属状態から反強磁性的金属相に変化すると推測されている。またSr濃度x=0.2以下では反強磁性絶縁体相を示すが、0.2<x0.5の領域では長距離磁気秩序が今のところ観測されておらず、反強磁性的短距離スピン相関を有する金属相であろうと推測されている。中性子散乱実験をもちいて、この濃度領域の磁気構造と磁気相関を明らかにすることが本研究課題の目的である。 このために、我々は中性子散乱実験に使用可能な大型単結晶試料の作成と作成した試料の物性評価を行なってきている。本年度は物性研究所の柏キャンパスへの移転があり、効率的な試料作成が行えたとは言い難いが、単結晶試料の育成条件を詳細に検討してきたこれまでの研究の成果をふまえ、次第に中性子散乱実験に使用可能なサイズの大きな試料の作成が可能になってきているところである。平成13年度は、まずある程度の大きさの単結晶試料を用いて磁気構造の解析を進める予定である。
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