以前より進行しているブリストル大学との共同研究によりκ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2のドハースファンアルフェン振動に現れる、超伝導揺らぎ効果の温度依存性についての議論をまとめた。温度依存性は熱揺らぎにより予想されるものより小さく、現象には量子揺らぎが関わっていることが明らかとなった。これは7月に開かれた合成金属国際会議(ICSM)にて発表した。またその角度依存性は8月に開かれた磁性国際会議(ICM)においてブリストル大学のグループにより発表された。 また超伝導磁石を購入し現有ヘリウム3クライオスタットと組み合わせた極低温磁場測定系を構築し、シュブニコフ振動および角度依存磁気抵抗の測定を開始した。しかし試料回転機構等に問題があり微小な抵抗振動の観測に必要な高精度の実験はまだ実施していない。このため予備測定として(BEDO-TTF)_5(HCTMM)(Ph-CN)について実験を行っている。この塩は京都大学大学院理学研究科化学専攻の有機物性化学研究室で新しく合成されたものである。この錯体は超伝導転移を示さないが、有機超伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu(NCS)_2と同様に1次元的なフェルミ面と2次元的なフェルミ面を持つ。角度依存磁気抵抗の結果より1次元的なフェルミ面による磁気抵抗を観測した。この内容は2001年3月の物理学会にて報告予定である。
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